
文/絵 Marcus Pfister | |
Print length 32 pages | 出版年月日 1992/9/1 |
AD610L | |
4-8歳 |
『にじいろのさかな(The Rainbow Fish)』
1.あらすじ
Rainbow Fishは、海で一番美しい魚でした。彼の体には、青や緑、紫、ピンクなどの美しい色に加え、キラキラと輝く銀色のウロコが散りばめられていました。
しかし、彼はその美しさを誇りに思うあまり、他の魚たちと距離を置いていました。ある日、小さな青い魚がRainbow Fishに「銀のウロコを1枚ちょうだい」と頼みます。しかし、Rainbow Fishは冷たく断ってしまいました。
小さな青い魚は悲しみ、そのことを他の魚たちに話しました。すると、Rainbow Fishは仲間外れにされ、誰も彼と遊ぼうとしなくなってしまいます。孤独を感じたにじうおは、ヒトデに相談し、賢いタコのもとへ行くように助言されます。
タコは「銀のウロコをみんなに分け与えなさい。そうすれば本当の幸せを見つけられる」と Rainbow Fishに言いました。Rainbow Fishは最初は迷いましたが、小さな青い魚に1枚の銀のウロコをあげてみることにしました。すると、小さな青い魚は大喜びしました。
それをきっかけに、Rainbow Fishは次々とウロコを分け与え、とうとう最後の1枚を残すだけになりました。しかし、彼はもう孤独ではありませんでした。Rainbow Fishはたくさんの仲間とともに、心からの幸せを感じながら泳いでいくのでした。
2.感想
『The Rainbow Fish』は、1992年にスイスの作家・イラストレーターであるマーカス・フィスターによって描かれた作品です。発売以来、30年以上にわたり世界中の子どもたちに愛され続けており、その魅力は色あせることがありません。
この絵本の最大の特徴は、キラキラと光る銀のウロコの美しさです。絵本のページをめくるたびに、まるで本物の魚のように輝くウロコが目に入り、子どもたちを惹きつけます。視覚的な楽しさだけでなく、物語のメッセージも深く、幼い子どもたちにも伝わりやすいシンプルな構成になっています。
Rainbow Fishは、最初は「誰よりも美しいことが幸せ」だと信じていました。これほど美しいウロコを持っていたら、きっと小さな頃から褒められ続けてきたことでしょうし、自分の価値は美しさだと感じることでしょう。ですが、実際にはその美しさが原因で孤立してしまいました。しかし、仲間にウロコを分け与えることで、彼は「みんなと一緒にいることの幸せ」に気づきます。
「本当の幸せとは何か?」という問いに対する答えを、Rainbow Fishは体験を通じて学びます。これは、大人にとっても考えさせられるテーマです。自分の持っているものを分け合うことで得られる喜びや、思いやりの大切さを伝える素晴らしい作品です。
また、この絵本は親子の思い出としても特別なものになりやすいようです。私自身も小さい頃に母に読んでもらったこちらの絵本を、今では子ども達に読んでいます。世代を超えて愛され続ける作品であることも、本書の魅力の一つと言えるでしょう。
3.作者について
**マーカス・フィスター(Marcus Pfister)**は、スイス出身の絵本作家・イラストレーターです。彼はもともとグラフィックデザイナーとして活動していましたが、1986年に絵本作家としてデビューしました。
『The Rainbow Fish』のアイデアは、彼が以前に描いた絵本『The Sleepy Owl』に由来しています。フクロウの羽を魚のウロコに置き換えたことで、独自のキャラクターが生まれました。特に、キラキラと光るウロコのデザインは、当時の絵本業界では珍しく、制作コストが高かったため、出版には大きな挑戦が伴いました。しかし、その大胆な試みが成功し、『The Rainbow Fish』は世界的なベストセラーとなりました。
現在までに、『The Rainbow Fish』シリーズは8冊以上が刊行され、それぞれ異なるテーマを持っています。例えば、『Rainbow Fish and the Big Blue Whale』は「対立の解決」、『You Can't Win Them All, Rainbow Fish』は「負けを認める」について描かれています。これらの続編も、親子で楽しめる絵本として人気を集めています。
4.おすすめのポイント
① 美しいビジュアルとデザイン
本作の最大の特徴は、やはりキラキラと光る銀のウロコです。ページをめくるたびに輝くウロコが目に入り、小さな子どもたちを魅了します。また、海の世界を描いた優しい水彩画も、幻想的な雰囲気を醸し出しています。
② シンプルながらも深いメッセージ
「分け与えることで得られる幸せ」というテーマは、子どもだけでなく大人にとっても大切な教訓です。特に、競争社会の中で「他人と比べること」に価値を置きがちな現代において、この絵本は「本当の豊かさとは何か?」を考えさせてくれます。
③ さまざまな世代が楽しめる
この本を読んだ多くの人が「子ども時代に読んだ」と語り、親子で楽しんだ思い出があることを強調しています。また、子どもが大きくなった後も、次の世代へと受け継がれていくような、特別な一冊となるでしょう。
④ 繰り返し読みたくなるストーリー
単純な物語でありながら、読むたびに異なる気づきを与えてくれる作品です。幼児期に読めば「にじうおの変化」を楽しみ、小学生以上になれば「本当の幸せとは何か?」を深く考えられるようになります。そのため、年齢を問わず長く楽しめる絵本です。
5.まとめ
『The Rainbow Fish』は、ただの美しい絵本ではありません。見た目の美しさだけでなく、「本当の幸せは、誰かと分かち合うことで生まれる」という大切なメッセージを持った一冊です。
子どもへの読み聞かせにはもちろん、大人が読んでも心に響く作品です。親子の絆を深める一冊として、ぜひ手に取ってみてください。