
文/絵 Chris Haughton | |
Print length 30 pages | 出版年月日 2013/2/7 |
2-5歳 |
『ちょっとだけまいご』の紹介
1.本の紹介
『A Bit Lost』は、Chris Haughtonによるデビュー作で、2011年にCBI Children's Book of the Yearを受賞した名作絵本です。世界21カ国で翻訳され、9カ国で13の賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を得ています。
本作は、巣から落ちてしまったLittle Owlが、Squirrelの助けを借りながらお母さんを探す心温まる物語です。カラフルで独特なイラストとシンプルながら愛らしいストーリーが特徴で、小さな子どもが楽しめるだけでなく、大人の読者も魅了します。
イギリスのSunday Timesでは「A captivating debut(魅力的なデビュー作)」と称賛され、Pregnancy & Parentingも「Earnest and witty in equal measure, tots will love the quirky illustrations.(誠実さとユーモアが同居した作品で、小さな子どもたちはユニークなイラストを気に入るでしょう)」と紹介しています。
シンプルな物語の中に、愛情や冒険、そしてユーモアが詰まった、すべての子どもに読んでほしい一冊です。
2.あらすじ
夜の森の中で、Little Owlは巣の中ですやすやと眠っていました。ところが……
Uh-oh!
寝ぼけてバランスを崩し、巣から転げ落ちてしまいます。ドスン!と地面に着地したLittle Owlは、自分がどこにいるのかわからず、不安になります。
「Mummyはどこ?」と心細くなったLittle Owlを見つけたのは、親切なりすでした。りすは「大丈夫!Mummyを探してあげるよ!」と励ましながら、一緒にお母さん探しを始めます。
しかし、りすの記憶はちょっと曖昧……
"What does she look like?"
Little Owlは、「えっと……大きな目があるよ!」と答えます。するとりすは、「大きな目?わかった!」といって、大きな目を持つ動物を探してきます。でも、くまでした。
次にLittle Owlは、「Mummyには、尖った耳があるよ!」と教えます。りすは、「尖った耳?よし、見つけた!」と張り切りますが、今度はRabbitを連れてきてしまいます。
何度も間違えながら、いろいろな動物と出会ううちに、Little Owlはますます心細くなっていきます。そんな中、カエルがやってきて、「もしかして、知ってるかも」と言います。そして、カエルに案内されてたどり着いたのは……
ついに、待ちに待ったMummyのもとでした!
"MUMMY!!"
Little Owlは大喜びでお母さんに飛びつきます。Mummyは、「よくがんばったね」と優しく抱きしめます。
ホッとしたLittle Owlは、Mummyのぬくもりの中でまた眠くなってきました。そして巣へ戻ると、ふたたびウトウト……
ところが……
"Uh-oh!"
またしても巣から転げ落ちてしまい、Mummyが頭を抱えるラストシーンで物語は終わります。
3.私の感想
① シンプルなストーリーが心に響く
親とはぐれた小さなフクロウが、一生懸命にMummyを探す――とてもシンプルな話ですが、そのシンプルさが逆に心に残ります。りすがちょっとおっちょこちょいで、Mummyを間違えてばかりなのがコミカルで楽しいです。
子どもが一人で不安になりながらも、周りの助けを借りてお母さんに再会するという展開は、小さな子どもにとって安心感を与えてくれるでしょう。
② イラストが独特でかわいい
Chris Haughtonのイラストは、カラフルでレトロな雰囲気があります。Sunday Timesのレビューでは「like 1970s' curtains(1970年代のカーテンのよう)」と表現されていましたが、確かにオレンジやターコイズ、パープルなどの大胆な配色が特徴的です。動物たちの表情もユーモラスで、特にLittle Owlの戸惑いや、Squirrelの得意げな顔が絶妙です。
③ ラストの「Uh-oh!」が子どもに大ウケ
物語の最後に、またLittle Owlが巣から落ちてしまうシーンがあります。私の子どもも、この場面で毎回大笑いしていました。「せっかくMummyに会えたのに、また落ちちゃうなんて!」という意外性が、子どもにとって楽しいポイントのようです。
4.作者について
Chris Haughton
Chris Haughtonは、アイルランド出身のデザイナー兼イラストレーターです。『A Bit Lost』は彼のデビュー作でありながら、世界的に大ヒットし、多くの賞を受賞しました。
その後も『Oh No, George!』『Shh! We Have a Plan』などの作品を発表し、彼のスタイルは多くの読者に愛されています。『Shh! We Have a Plan』は2014年のSpecsavers Irish Children's Book of the Year Junior Awardと、アメリカのEzra Jack Keats New Illustrator Awardを受賞しました。
現在はロンドンに在住し、新作絵本の制作に加え、デザインやアートプロジェクトにも携わっています。
5.おすすめポイント
① 幼児にぴったりの安心感のあるストーリー
迷子になったLittle Owlが、周りの助けを借りてMummyに再会するという物語は、子どもにとって安心感のある展開。親子で読めば、「お母さんがいつもそばにいるよ」というメッセージを伝えられます。
② クセになる「Uh-oh!」のリズム
Little Owlが落ちるたびに繰り返される「Uh-oh!」が楽しく、声に出して読むと子どもが喜びます。
③ シンプルで可愛らしいイラスト
レトロでユニークな配色と、シンプルながら表情豊かなキャラクターが魅力的。動物たちのリアクションを見るだけでも楽しい!
④ 読み聞かせに最適
文章が短く、繰り返しが多いため、子どもと一緒に声に出して読むのにぴったり。キャラクターごとに声を変えたり、動作をつけたりするとさらに楽しめます。
⑤ 繰り返し読んでも飽きない
ストーリーはシンプルですが、子どもたちは何度読んでも楽しめる作品。毎回「Uh-oh!」の場面で笑ったり、Mummyとの再会に喜んだりする姿が微笑ましいです。よく見れば、背景に探しているMummyの影が描かれていたり…
6.まとめ
『A Bit Lost』は、心温まるストーリーとユーモラスなイラストが魅力の名作絵本です。親子で楽しめるだけでなく、読み聞かせにも最適な一冊。小さな子どもへのプレゼントにもおすすめです!